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ほのぼのノリかめ日記

語り継がれなかった話その3・四っの石

昔むかし、遠いむかし。
北の国のお話です。

ある小さな村にじぃじと娘が住んでいました。
北国の長い冬が終わり春が来て野いちごの実がなる頃になりました。

「じぃじ。明日天気がよかったら行こう。」
「そうだな。行くか。」
それだけで二人には通じます。
あの小高い丘の木の木陰の大切な石、お父さんお母さんのお墓参りに行くことが。
次の日は晴れて二人は出かけました。
野いちごの実のなる野原で野いちごを摘んで食べます。
ここでお母さんが身を犠牲にして助けてくれたことも聞きました。
ここでも小さな手を合わせて祈ります。

いつものように野の花を摘みながらのんびり歩きます。
大切な石がお父さんとお母さんのお墓とじぃじに教えられてからも
大切な石の所に行くことはなぜか嬉しい娘でした。
じぃじにお父さんとお母さんがどれだけ娘を大事に育て愛していたかを聞いたからかもしれません。

いつものようにお墓の周りを綺麗にし
摘んできた野の花を手向けて
二人で手を合わせて祈りました。

秋になり山ぶどうが美味しい季節になりました。
お墓参りに行くと約束した朝、娘が起きるとじぃじが熱を出して起きれる状態ではありませんでした。
二日ほど高熱が続き娘は一生懸命に看病しました。
三日目の朝、少しは熱が下ったようでした。眠っているじぃじを起こさないように娘は出かけました。
夕方近くになって
「じぃじ、じぃじ。」と呼ぶ声でじぃじは目を覚ましました。
外で娘が呼ぶ声でした。
外にでると娘が倒れていました。その手には山ぶどうが握られていました。
「じぃじ、山ぶどうだよ。」とか細い声でいいながら山ぶどうをじぃじに差し出しました。
抱きかかえると凄い熱です。身体を見ると足から血が。
毒ヘビに噛まれた痕でした。
家に抱きかかえて入ると薬草を足に塗って寝かせました。
寝込んでいたじぃじに山ぶどうを食べさせたくて出かけて毒ヘビに噛まれてしまったのです。
じぃじには娘が助からないことがすぐ分かりました。

山ぶどうを娘の口に含ませると、
「じぃじ、美味しいよ。じぃじも食べて。」とやっと話しました。
じぃじが山ぶどうを食べて
「美味しいよ。ありがとう。」と言うと嬉しそうに笑いました。
「じぃじ・・・」それが最後の言葉でした。

じぃじの大きな泣き声で村の人がかけつけてきました。

じぃじは三日三晩、娘を抱いて泣き続けました。
4日目の朝、村の人が家に行くと誰もいませんでした。

心配になった村人はみんなで探しました。
小高い丘の木の木陰に行くと娘の小さな石のお墓が両親のお墓と並んでありました。
しかしじぃじはどこにもいませんでした。
じぃじは娘を葬ってどこかに行ってしまったようです。

村人はじぃじを探すのを諦めて帰りました。
それからしばらくして初雪が降った日、大切な石のそばでじぃじの遺体を村人が見つけ
大切な石が四っ並びました。

春になると野の花を摘む娘とじぃじの姿をみかけたとか
野いちごをお父さん、お母さんと娘とじぃじが楽しそうに採って食べているのを見かけたとか
秋になると山ぶどうを採る姿を見かけたとか
小高い丘で夕焼けを眺める姿を見たとか
そんな噂がながれましたが
月日が経つごとに村人の記憶からも消えて、語り継がれることはありませんでした。
小高い丘の木の木陰にあった大切な石の場所もいつしか忘れ去られ、雑草の中に消え去りました。
                                      (おわり)

昔、お父さんとお母さんと娘とじぃじはこんな夕焼けを見たかもしれません。
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  1. 2012/09/17(月) 05:30:05|
  2. 語り継がれなかった話
  3. | コメント:12

語り継がれなかった話その2・木の木陰の大切な石

昔むかし、遠いむかし。
北の地方のお話です。

ある村に幼い女の子とじぃじが住んでいました。
夜眠るときにじぃじが
「明日天気がよかったら大切な石の所に行くよ。」と言いました。
女の子は
「うん!」と大きく嬉しい表情で答えました。
「大切な石の所。」に行くことは女の子にとって一番嬉しいことでした。

一番寂しいのは、じぃじが男達と狩りに出かける時です。
狩りの時はある家に預けられて留守番です。
一緒に遊んでくれる子供がいても女の子は口にはだしませんが
じぃじがいないので本当は寂しいのです。

魚つりの時はじぃじと一緒ですが
釣っている時はじぃじの近くで一人で遊ぶしかありません。
だからちょっと寂しいです。
夏はじぃじが作ってくれた川べりの小さな池で遊びます。
その池にじぃじが釣った魚を入れてくれます。
魚を小さな手で捕まえると
「じょうずだね。」と言って頭をなでられるのが嬉しい女の子です。

朝起きるといい天気で
二人は「大切な石の所」に出かけました。
今日は一日ずっとじぃじと一緒です。それだけでも嬉しい女の子です。
手を繋いで歩いたり
疲れるとおんぶしてもらったりします。

野の花が咲いているといつものように摘みながらのんびり歩いて行きます。
「じぃじ、野いちごはあるの?」と聞くと
「今の季節はないよ。でも山ぶどうがあるよ。」と答えました。
女の子は「山ぶどうはどんな味がするのな?」とわくわくしなが歩いて行きました。

しばらく歩くと
「ここで待っていなさい。」と言ってじぃじがやぶの中に分け入りました。
しばらくすると両手に何か持って現れました。
「はい。山ぶどうだよ。」
女の子は山ぶどうを不思議そうに見ました。
初めての山ぶどうです。ひとつぶじぃじが口に入れてくれました。
甘酸っぱい味が口一杯に広がりました。

神秘的な青い池につくとひとやすみします。
ここも大好きな場所です。

しばらく歩いてやっと小高い丘の木の木陰の「大切な石」の所に着きました。
いつものように二人は二つの石の周りの雑草を取り
途中で摘んで来た野の花を手向けました。
女の子はじぃじの真似をして小さな手を合わせました。

木の木陰、「大切な石」のそばで
じぃじが作った団子や干した魚、そして山ぶどうを食べました。

女の子はじぃじとずっと一緒に居れて美味しいものを食べれる
「大切な石の所に行く。」ことが嬉しくてたまりません。
食べ終わるとじぃじの大きな胸で眠る女の子。
野いちごと山ぶどうを一緒に食べる夢を見て微笑みました。

無邪気に微笑みながら眠る女の子の頭をなでながら
まだ幼くて「お父さん。お母さん」がいないことを理解できない女の子に
「大切な石」が「お父さん、お母さん」のお墓であることを告げる日が近づいていることを
悲しい思いで感じていました。

綺麗な夕焼けを見ながら帰る時、じぃじの目からいつも涙がこぼれました。
                              (つづく)

この木の木陰には大切な石はありません。
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  1. 2012/09/16(日) 05:30:32|
  2. 語り継がれなかった話

語り継がれなかった話その1二つの石

3日間旅に出かけます。
記事は毎日予約投稿でアップしますので
よろしくお願いします。
コメント欄は閉じます。

拙い物語を3回連続でお届けします。

昔むかし、遠いむかし。
北の国のお話です。

あるところに小さな村がありました。
その一軒の家におじいさんと若い夫婦と幼い娘が住んでいました。
先住の民は狩りをしたり、川で漁をしたり、野の食べれる植物や根、木の実等を採取して暮らしていました。
豊かな民も貧しい民もいない、村人皆で助け合って生活をしている村です。

ある日おじいさんとお父さんは村の男達と狩りに出かけました。
夕方に野うさぎ等の獲物を獲っておじいさんとお父さんは帰って来ましたが
家にはお母さんも娘もいませんでした。
二人が慌てて探しに行くと
野いちごが一杯ある野原でお母さんがうつ伏せで倒れていました。
明らかにクマに襲われたと分かる傷が頭や背中に。
お父さんが抱き起こしましたがすでにこと切れていました。

お母さんの倒れた所にはくぼ地があってそこには幼い娘が何も知らずに眠っていました。
お母さんはクマから必死の思いで娘を助けたのでした。

おじいさんとお父さんは小高い丘の木の木陰にお母さんの亡骸をうめてその上に石を置いてお墓としました。

おじいさんはこの悲しい出来事も神の決められたことだと思いましたが
お父さんはクマへの怒りを抑えることが出来ず
村の長老やおじいさんの制止も聞かずに次の日復讐に燃えて男達数人でクマ狩りに出かけました。
数日後、男達は帰って来ましたがお父さんは帰って来ませんでした。
男達の話ではクマを見つけ弓矢を放ち、たしかにクマに傷を負わせましたが
仕留めることは出来ませんでした。
手負いのクマほど恐ろしいものはないことを男達は知っていましたので
帰ることにしましたが
お父さんだけは森の奥深くクマを追って行きました。
男達はお父さんが帰って来るのを待ちましたが無駄でした。

しばらくして小高い丘の木の木陰に二つ目の石が置かれました。
                         (つづく)
この木の木陰に二つの石はありません。
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  1. 2012/09/15(土) 05:30:38|
  2. 語り継がれなかった話

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ノリかめ

Author:ノリかめ
美瑛の風景に魅せられて。たまに旅の写真も。
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