題名「ある愛の詩」
作者「新堂冬樹」
小笠原に住む青年・拓海と東京都に住む音楽大学生の女性・流香との純愛物語。「ある愛の
詩」の題名通りの素晴しい物語。読みながらまた、泣いてしまいました。拓海の純粋無垢な性格。父親を海難事故でなくし、母親は悲嘆のすえ自殺。それでもおじいさんに育てられ、小笠原の自然と融合した生活で素直に子供みたいな自然児に成長した姿。
最初のプロローグ「青の詩」で小笠原の海での傷ついたイルカと拓海のふれあいは拓海そのものであり、まだ一度も小笠原に行ったことのない私が、イメージとしてまるで映像を見るように小説を読めました。
海岸での流香との出会い。マリンスターを求めて二人で海中に潜るシーンもすばらしい描写です。母に裏切られ「愛」を信じられなくなった流香の心を感じそばにいようとする拓海。
おじいさん留吉の言葉
「お前はたくさんの愛を持っておる子じゃ。だが、愛しかたと愛され かたを知らん。そばで、見守ることだけが愛だと思っとる。それは悪 いことじゃないが、ときには求めることも必要じゃ。」
東京に出てきても、この言葉通り、見守る事しかできない拓海。東京の夜の明るさを
「月の光が行き場所を失っている。」と感じる心。
色んな出来事があり、行き違い、かん違いで心と心がすれ違う2人。
最初に出合った時
「君のことが好きだ。」
と告げた拓海。
軽々しく何も私のこと知らないのに好きとか言わないでと流香に言 われ、
「人を愛するのに時間や、理由がそんなに重要なのかな?」
「たしかに、僕は君のことをなにも知らない。名前だって、今日、初 めて知った。けれど、僕にはひとつだけわかっていることがある。い つの時代に君と巡り合っても、僕は出会った瞬間に告白しただろうっ てことを。」
最後まで見守る愛し方しか出来ない拓海の「愛」。
ひとり小笠原に帰る拓海。
その愛にやっと気が付く流香。
ひとり拓海のいる小笠原へ。
消えないで・・・今度はわたしがあなたを守ります。
寄り添い歩く白砂に足跡をつけて行くように、
ふたりの恋はこれから始まる。
もし興味のある方は是非読んでみてください。
この小説を紹介してくれた「ココロさん」ありがとう。
- 2007/05/30(水) 06:00:46|
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